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部活動は学生時代の思い出
部活動の重要性・必要性については、まだまだ議論していく必要がありますが、日本の学校教育システムにおいて部活動は大きな割合占めていると言っても過言ではありません。
学生時代に共に汗を流し、同じ釜の飯を食べた部活動の仲間とは、学校を卒業した後も長く付き合っていくことのできる大切な友人となっていきます。
学生時代の記憶や思い出は年を取った後でも鮮明に残っており、特に部活動の記憶は脳に深く刻み込まれています。
テレビなどで有名人の話を聞いていても、たった3年間の高校時代の部活動の栄光を20年30年たった後でも誇らしげに語っている場面をよく見ます。
それほど私たちにとって部活動というものは、深く記憶に残る「学生時代の思い出」となるのです。
しかし、そんな部活動も教職員からすると、非常に負担となる業務のひとつとなっているのが現状です。
部活動は長時間労働の原因?
例えば、部活動の朝練習に参加するため朝7時30分に出勤し、午後3時まで授業を行いそこからさらに午後の部活動の指導に当たる。その後、教員室へ戻り採点や評価、公務分掌の仕事やその他雑務等を行わなければならい。そして、帰宅は午後8時、9時以降になるなんてことは教師にとってよくあり得ることであります。
このように業務量が多く、仕事を終えるのが夜遅くなるのにも関わらず、公立の学校に勤める教職員に対して「残業代」というものは一切発生しません。
労働基準法第32条において法定労働時間というものが決められており、「1日8時間 週40時間まで」と規定されています。原則として、法定労働時間を超えた時間はすべて割増賃金の支払い対象となります。
しかし、教職公務員には適応されず、その代わりに「定額働かせ放題」のような法律が存在しているんです。
教師は「聖職」であるということを理由に、1972年に施行された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」によって、4%の「固定残業代」をもらう代わりにいくら残業しようとも違法にならないというルールがいまだに存在しています。それによって、教職員が長時間労働を行うことが「あたりまえ」となってしまっているのです。
実際、小学校教師の約3割、中学校教師の6割が、月に80時間以上の時間外労働をしており、多くの教師が「過労死ライン」にいるというデータが文部科学省の調査で明らかとなりました。
部活動のメリット
今回は、生徒と保護者および教職員それぞれの視点から部活動のメリットデメリットについてどのようなものがあるかみていきます。
生徒・保護者のメリット
〇友達作り・人間関係を学べる
生徒や保護者が部活動に一番期待していることとして、友達を作ったり、集団の中で活動することで人間関係や社会性、また、チームワークなどを学ぶことに最も期待しています。
先ほど述べたように、学校を卒業した後でも部活動のメンバーとは長く付き合っていくことがよくあり、部活動でできた仲間というのは一生付き合っていくことのできる大切な友人になるかもしれません。
また、部活動を通して上下関係も学ぶことができます。日本の社会では、この上下関係というものが非常に重要であるため、実際に社会に出た時に役立つといえます。
〇体力の向上が期待できる
多くの家庭で心配していることが、運動不足なのではないでしょうか。
一般的に学生は1日1時間以上の運動を行うことが推奨されています。しかし、体育の授業は毎日あるわけではないため、推奨されている時間運動するには、運動部などの部活動に参加することで補うことができます。
さらに、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、ステイホームとなり、オンライン授業という形を余儀なくされました。
多くの子供たちから運動する時間や環境が奪われ、多くの時間を家の中で過ごさなけらばならなくいけなくなり、その結果、多くの子供たちが運動不足に陥りました。
そういった経験から、やはり運動不足解消を部活動に期待している保護者も多いです。
〇学校が子供の面倒を見てくれる
両親が共働きで、日中家には誰もいないという家庭もあります。
そんな時、子供をひとりで家に居させるよりも、部活動に参加し、学校が子供の面倒を見てくれるのは非常に助かります。
また、習い事と比べて部活動は学校でそのまま行うことができるので、送り迎えをする必要がありません。しかし、習い事の場合、親が送り迎えなどしなければいけない場合もあります。
そういった面でも、子供が部活動に参加することで、保護者の負担はかなり減ると考えられます。
〇費用が安く済む
もし、学校以外の場所で習い事やクラブチーム等に参加させる場合、その費用はプラスで掛かってしまいます。しかし、部活動であれば学校活動の範疇であり、公立の学校では基本的に無料または少額の活動費で済みます。
もちろん用具等に費用は掛かるものの、裕福でない家庭でも習い事やグラブチームに参加させるよりも費用が安く済みます。
教職員のメリット
〇生徒との関係性を構築
教職員が部活動を指導することで、教室やその他の学校生活では気づけない生徒の様子等に気づくことができたり、生徒をより理解するための非常に重要な時間となります。
また、生徒と共に汗を流すことによって、より良い関係性を築くことができるかもしれません。
〇好きな競技等の指導が行える
先生の中には、進んで部活動の指導を行いたいと考える先生も多いのではないのでしょうか。学生時代に行っていた競技を自分の教え子にも教えたいと考える先生もいると思います。
中には、部活動の指導をしたいという理由で教師になった先生もいるといいます。
部活動のデメリット
生徒・保護者のデメリット
– 家族の時間が無くなる
家族で過ごす時間は、何よりも大切な時間であるべきです。
子どもが多くの時間を部活動に費やしてしまうことで、その分家族と過ごす時間が無くなっていきます。
友人との絆は強くなる一方で、家族と過ごす時間が少なくなり、子供と家族との関係性が希薄となっていくかもしれません。
特に週末の時間をすべて部活動に費やしてしまうと、せっかくの家族で過ごす大切な時間が無くなっていきます。家族旅行に行く機会や、子供たちは疲れ果てているため、一緒に外出する時間も無くなってしまいます。
– 成績に影響する
部活動は勉強勉強と同じくらい大切であると考える保護者は多くいます。
部活動も勉強も共に頑張ってほしいと望む一方、部活動に集中しすぎてしまうことにより、その分勉強がおろそかになってしまうのではないかと考える保護者も少なくありません。
実際、部活動が終わって、家に帰ってからでは疲れ果てていて勉強を行うことができない子供も多いと思います。
– ケガのリスクがある
スポーツを行う上で、ケガはつきものです。しかし、重大なケガが起きてしまうのではないかと不安になるのは、親として普通のことです。
ちなみに、 学校の管理下で児童生徒が怪我をして治療や入通院が必要となった場合、日本スポーツ振興センターの「災害共済金給付制度」というものがあり、その保護者に対して給付金が支払われる制度があります。
任意加入であるため、導入していない学校もありますが、一般的に多くの学校で導入されており、入学時に児童生徒の保護者が同意書を記入し提出します。年額の保険料を保護者と学校が負担するような仕組みになっています。
– 部活動強制参加
最近では減ってきていますが、部活動に強制参加させる学校もあります。
本人が行いたくないのにもかかわらず、学校が強制して部活動に参加させる必要があるのかが疑問です。
教職員のデメリット
– 専門性の無い顧問
指導する競技の専門性の無い教師が部活動の顧問を行わなければならいないということが実際に多くの学校で起きています。
例えば、テニスラケットを一度も握ったことのない教師がテニス部の顧問をしなければならないということがあります。
もちろん、顧問はその競技について勉強して指導に当たるとは思いますが、全く行ったことのない競技を教えなければならないというのは、教師にとっても生徒にとっても非常に不幸な時間となってしまいます。しかし、実際に多くの学校現場でこのようなことが起きています。
日本体育協会が行った「学校部運動部活動指導者の実態に関する調査(平成26年7月)」によると、中学校の運動部担当教師のうち、担当教科が保健体育ではなく、かつ担当の部活動の競技経験がない教師の割合は45.9%という結果が出ました。
学校内にその競技を指導できる人材がいないから誰かを充てがわなければならないというのは理解できますが、やはり専門性のある指導者から指導を受ける方が生徒のためにもなります。
– 長時間労働の温床
先ほど述べたように、多くの教師が「過労死ライン」にいます。その原因のひとつが部活動指導と言っても過言ではありません。
平日の放課後に部活動を行い、土日にも練習や対外試合などを行う。せっかくの休日が、部活動指導で無くなってしまいます。
2016年にスポーツ庁の全国体力調査によって中学の運動部活動の休養日設定状況を調べた結果、学校の決まりとして1週間の中で休養日を設けていない学校が22.4%、土日に設けていない学校が42.6%でありました。
この調査結果を参考に、教師の過重負担の問題などから、文部科学省は全校に休養日の設定を提案し、スポーツ庁によって休養日数の基準などを示したガイドラインが出されました。
・ 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。(平日は少なくとも1日、土曜日及び日曜日(以下「週末」という。)は少なくとも1日以上を休養日とする。週末に大会参加等で活動した場合は、休養日を他の日に振り替える。)
平成30年 運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン スポーツ庁
・ 長期休業中の休養日の設定は、学期中に準じた扱いを行う。また、生徒が十分な休養を取ることができるとともに、運動部活動以外にも多様な活動を行うことができるよう、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
・ 1日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、学校の休業日(学期中の週末を含む)は3時間程度とし、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行う。
しかし、実際のところガイドライン自体に罰則などがあるわけではなく、「守りましょう」というものであるため、実際に守られるのかどうかは疑問であります。
– 少ない部活動手当
部活動の指導を行うにあたり、各自治体によって「部活動手当」というものが決められていますが、実際には割に合わないものばかりです。
例えば、休日に部活動を指導した場合は、1日(4 時間程度以上)3,000 円などと決めている自治体などがあります。
しかし、お金を払ってでも休みたいという教員もいるのではないでしょうか。
部活動指導員とその効果
部活動指導員とは
「部活動指導員」とは、平成29年4月に学校教育施行規則の一部が改訂され、新たに制度化された学校職員であり、中学校・高校の部活動において、学校長の監督下で顧問の代わりに単独で指導・引率ができる人のことです。
部活動指導員の役割
部活動指導員は、部活動の指導だけでなく、日常的な生徒指導も求められています。教師と指導内容だけでなく、生徒の様子や事故が起きた際の対応などについても密に情報交換を行い、十分な連携を図らなければなりません。
部活動指導員は単独で顧問になることも可能ですが、その場合、学校長は当部活動の担当教諭を置くことが義務付けられており、担当教諭は指導計画の作成支援や生徒指導、事故が起きたときなどに必要な対応を行わなければなりません。
学校長監督のもと、技術的指導だけでなく生徒指導や事故時の対応についても職務が明確になったため、 部活動指導員単独で顧問になることや対外試合や大会などに生徒を引率することも可能となりました。
部活動指導員の実際
部活動指導員によって少しでも教師の負担軽減につながればよいとは思うのですが、非常勤公務員として雇い、時給1600円で週6時間程度であるため、フルタイムの収入からはほど遠いです。
また、活動は昼間すぎから夕方であるため、フルタイムで仕事がある人はなかなか行うことができません。そのため、大学生や元教職員などがターゲットとなり得ますが、実際にはなかなか担い手がいないのが実情である。
部活動の今後 -学校部活動から地域スポーツクラブへ-
2020年10月、経済産業省から「地域×スポーツクラブ産業研究会」が発足したと発表された。
小中高生の部活動について、対価を取って質の高い指導を行うことにより、日本のスポーツ界の底上げにつながり、同時に教職員の働き方改革の一環および各地域のスポーツクラブ産業の成長につなげる目的があります。つまり、学校部活動の地域移行へと大きく舵を切っていくことになりそうです。
文科省は来年度(2021年度)から各都道府県モデル校で実証実験を開始し、段階的に2023年度からの導入を目指しています。
これらの動きは、子供たちにとっても質の高い指導を受けることができ、教職員にとっても労働負担の軽減につながる、また経済効果も期待できるため経済界にとっても、Win-Win-Winであると感じます。
実際、海外では部活動ではなくこのような地域スポーツに参加する形がよく取られています。
全国でこのようなシステムが導入されることで、多くの問題が解決されていくのではないのでしょうか。

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